医療DXはなぜ進まないのか?【医療商社のプロが解説】
近年、さまざまな業界でデジタルトランスフォーメーション(DX)が進められていますが、その波は医療業界においても例外ではありません。
医療DXが期待されている背景には、より質の高い医療サービスの提供や効率化を実現することが挙げられます。
しかし実際には、多くの医院やクリニックがDXの波にうまく乗れず、進展が遅れているのが現状です。
「医療DXはなぜ進まないのか?」
この疑問は、医院・クリニック運営者にとって重要な課題となっています。
この記事では、医療商社のプロとして長年業界を見てきた筆者が、医療DXが進まない理由やその克服方法について具体的に解説します。
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医療DXとは何か?
医療DXとはデジタルトランスフォーメーションのことであり、医療分野においても情報技術を活用して業務の効率化、質の向上を図る取り組みです。
これには電子カルテの導入、オンライン診療、AIによる診断支援などが含まれます。
しかし現代の医療業界では、デジタル技術の導入が進まない理由が複数存在しています。
実際にDXを推進するためには、これらの原因を取り除くことが重要であり、そのためには課題の本質を理解した適切な取り組みが求められます。
医療現場におけるDXの現状
医療現場において、DXは患者様の満足度向上と業務効率化に不可欠ですが、不安や課題が伴っています。
ここでは、医療業界の方々が抱えるクラウドへの不安、サイバーセキュリティの不安、そして個人の医療情報漏洩に対する不安に焦点を当て、それぞれにどんな課題があるのかを解説します。
クラウドに関する不安
医療DXの導入において、クラウド技術の活用は避けて通れません。
患者様情報の管理や電子カルテ、遠隔診療など、多くのデータがクラウド上で共有されるようになることで診療業務の効率化が期待されています。
しかし、現場では依然としてクラウド技術に対する不安が根強いです。
特に医療従事者や運営者の間では、クラウドに重要な医療データを預けることへの信頼性が十分に浸透していない点が課題です。
またデータがどこに保存され、どのように管理されているのかを把握しにくいと感じる医療機関は少なくありません。
サイバーセキュリティの不安
医療機関が抱えるもう一つの大きな懸念は、サイバーセキュリティのリスクです。
近年、医療データを狙ったサイバー攻撃が増加しており、大規模な病院のみならず中小規模のクリニックでもサイバー攻撃のターゲットとなる可能性が高まっています。
医療機関が取り扱うデータは非常に機密性が高いため、一度情報漏洩が発生すれば患者様との信頼関係が崩れるだけでなく、法的な問題にも発展しかねません。
例えば、2018年に奈良県の宇陀市立病院では、ランサムウェア攻撃により電子カルテシステムが停止し、復旧までの間は紙カルテを使用せざるを得なくなりました。
また2019年には多摩北部医療センターで職員端末が不正アクセスを受け、メールボックスの一部情報が流出しました。
さらに、2020年には福島県立医科大学附属病院でコンピュータウイルスの感染が複数の検査機器に影響を与え、診療に支障をきたしました。
これらの事例からもわかるように、医療機関がサイバー攻撃の標的となった場合、その影響は診療業務にまで及び、患者への影響も避けられません。
(参考:日本医師会総合政策研究機構 日本の医療機関におけるサイバー攻撃の事例)
個人の医療情報漏洩に対する不安
患者様の個人情報、特に医療情報は極めてプライバシー性が高く、万が一漏洩すれば個人の生活に大きな影響を与える可能性があります。
この懸念は特に高齢者が多い地域や、家族経営のクリニックなどで顕著です。
システムやツールが情報漏洩のリスクを十分に防げるのか、どのような形で患者様のデータが保護されるのかが不明瞭な場合、医療DXの導入に慎重になります。
患者様の情報が漏洩した場合、その影響は甚大です。
2020年3月31日、青森県で新型コロナウイルスに感染した20代男性の電子カルテの画像がSNS上に流出しました。このカルテを管理していた「つがる西北五広域連合」は、翌4月1日に記者会見を開き、患者や家族、住民に対して謝罪しました。
流出したのは電子カルテを印刷した画像で、症状や移動経路、自治体名が含まれていましたが、氏名や住所などの個人情報は記載されていなかったとされています。
この事例は、医療機関での情報管理の重要性を再認識させるものとなりました。
(参考:NHK 感染者の電子カルテがSNSに流出 青森 新型コロナウイルス)
医療現場ではなぜDXが進まないのか?
医療業界でのDX推進は、以下のような複数の障壁によって進捗が遅れがちです。
- 操作性の不安
- 本来のメリットが伝わっていない
- 医療機器に比べて導入ハードルが高い
- 医療過誤防止が診療支援に繋がることが伝わっていない
こうした問題を解決し、効率的な医療サービスへと移行するためには適切な教育と情報提供が不可欠です。
操作性の不安
医療DX導入において、現場のスタッフが感じる操作性の不安は大きな障壁です。
特に医師や看護師は忙しい日常業務の中で、新しいシステムに習熟する時間を確保するのが難しく、複雑な操作はかえって業務の遅延やストレスの原因となります。
また高齢の医療従事者が多い施設では、デジタルツールの導入に抵抗感が強いこともDXが進まない要因となっています。
本来のメリットが伝わっていない
DX導入の最大のハードルは、現場の医療従事者や運営者に本来のメリットが伝わっていない点です。
例えば、電子カルテや遠隔診療システムは時間の短縮や診療精度の向上に寄与しますが、現場では「現状で十分」と感じているケースが少なくありません。
新しいシステムを導入することで得られる具体的な利点を理解していないため、変化に対する動機づけが不足しています。
医療機器に比べて導入ハードルが高い
医療機器と比較して、医療DXの導入にはシステム面でのハードルが高いと感じる運営者が多いです。
医療機器は具体的な効果や必要性が明確であり、導入時の理解も進みやすいです。
一方で、DXのシステムは複雑なプロセスを伴うことが多く、費用対効果や維持管理のコストに対する不安が強調されます。
そのため、導入に対する抵抗感が生まれやすいのです。
医療過誤防止が診療支援に繋がることが伝わってない
DXによる医療過誤防止が、実際の診療支援に繋がる点が十分に伝わっていないことも大きな課題です。
例えば、診断支援や処方ミスの防止など、デジタルツールは医師の負担軽減や医療の質向上に大きく貢献します。
こうしたメリットが理解されておらず、「診療の補助」ではなく「負担増加」として認識することが導入をためらう一因となっています。
関連記事: 電子カルテの移行作業はどうする?乗り換えのタイミングや注意点について!
医療DXを進める3つのアプローチ
医療DXを推進するためには、従来の方法に固執するのではなく、新たなアプローチを試みることが不可欠です。
業務プロセスの見直し、スタッフの教育と意識改革、そして最新技術への取り組みは、医療分野でのDXの前進を見据えた3つの重要なポイントとなります。
ここでは、それぞれのアプローチを掘り下げ、医療機関が直面する課題に対して実務的かつ具体的な解決策を提示します。
業務プロセスの効率化と再設計
医療機関におけるDX進展の一環として、業務プロセスの効率化は欠かせない課題です。
デジタルツールを活用した業務プロセスの再設計により、時間の節約とエラーの減少が見込まれるため、医師とスタッフの負担軽減に繋がります。
スムーズなワークフローを構築するためには、全員が共有できる電子カルテシステムの導入や、タスク管理ツールの活用が効果的です。
スタッフの教育と意識改革
DXを成功させるためには、スタッフ一人ひとりの教育と意識改革が必至です。
特に医療機関では年配の医師や従業員も多く、デジタルツールに慣れ親しんでいないことが多いため、カスタマイズされた研修プログラムが効果的といえます。
またDXのメリットを具体的に把握し、業務の改善点を発見するためのワークショップを開催することで、スタッフ全員が変化を受け入れる文化を育てます。
最新技術の積極的な導入
医療業界におけるDX推進には、最新技術への積極的な取り組みも大切です。
AIやビッグデータ分析などの先進技術を業務に活かすことで、診断精度の向上や効率的な患者様管理が可能になります。
ただし、新しい技術には多額の投資やスタッフの再教育が必要となることもあります。
これらを克服するためには、技術パートナーやベンダーとの協業を通じてコストを抑え、実践的なトレーニングを提供することが重要です。
【まとめ】医療DXに関するご相談はポップ・クリエイションへ!
今回は、「医療DXが医療分野でなかなか進展しない4つの理由」についてご紹介しました。
医療DXの進展が遅れる原因には、操作性の不安や本来のメリットの不明瞭さ、導入ハードルの高さ、そして医療過誤防止の理解不足など、さまざまな課題があります。
しかし、これらの問題を克服することで、業務の効率化や医療の質の向上を実現することが可能です。
ポップ・クリエイションでは、医療現場の課題解決に向けた最適なDX導入のサポートを行っています。
医療DXでお困りのことがありましたら、ぜひポップ・クリエイションまでお気軽にご相談ください。